今日は2020年5月5日。4日に安倍首相より緊急事態宣言の延長が発出されました。さらに最長1ヵ月外出自粛がつづくことになります。図書館、美術館、博物館、動物園、水族館等の公共施設も閉館したままですが、少しだけ緩和や解除の可能性が見えてきました。このような行動制限が継続するなかで図書館、美術館、博物館のひっそりした静寂の空間がなつかしく思えてなりません。わたしたちが小さい頃はこれらの施設に人影は少なく、子どもたちにとってちょっと緊張を誘う独特の雰囲気がありました。とくに薄暗い書庫や展示室は小説や童話の世界を想起させる装置のような存在でした。それが最近では、図書館は漫画や雑誌も豊富で児童書を充実させたり、多くの蔵書を開架にするなど随分オープンになりました。また上野や六本木の大型美術館では新聞社等が企画する集客性の高い展覧会が数多く開催され、平日でも立錐の余地のない企画展示がたくさん組まれています。ただ一方では来館者の減少で閉館する施設も少なくありません。
わが国では、泡沫経済の絶頂期、1980年代後半から全国の自治体で庁舎とともに文化会館、多目的ホール、劇場、美術館、博物館等々の芸術文化施設が雨後のタケノコのように林立するようになりました。一挙に増えた税収のうち公共事業費で建物が優先的につくられ、開館後の展覧会経費、作品購入費、調査研究費、専門スタッフの人件費などのソフト面が軽視される事例が頻発するようになります(いわゆる箱物行政と揶揄されました)。やがてバブル崩壊が現実化してくると運営予算は削られ、事業規模が縮小されたり、施設自体が休眠状態になるところも現れてきたのです。民間団体や企業の管理運営による指定管理者制度も導入されて、美術館経営に費用対効果が追求されるようになりました。来場者が少ない美術館はダメ美術館という数字で美術館を評価する傾向は現在もそれらの活動を蝕んでいるのです。
世界の美術潮流から見てもわが国の美術館の運営予算は少なく組織的にも極めて脆弱です。〈文化芸術の振興は21世紀の緊要な課題である〉と文化芸術基本法(2001年)に明記されていても文化予算は教育予算とともに削減される一方です。ただ官民を問わず誰でも一度は訪れたいと思う珠玉のような素晴らしい美術館は寡少ながらあります。そして残念ながら消えてしまったものもあります。そのなかで、まず福岡の久留米にあって2016年に閉館した石橋美術館について触れたいと思います。
